紅麹(べにこうじ)

紅い発酵食品
「紅麹」の知られざるパワー

紅い発酵食品「紅麹」の知られざるパワー

紅麹(べにこうじ)

紅麹とは

About Benikoji

日本の食を支える麹菌と
健康効果のある麹菌

素材を菌によって発酵させると、素材そのものが変化し、その過程で新しい成分も生み出されます。それこそが、発酵食の最大の魅力。日本食に欠かせない麹菌と中国で尊重される麹菌、その違いとは?

麹菌には黒麹菌、黄麹菌、白麹菌、
紅麹菌など、用途に応じた様々な
種類がある

麹菌にもいくつか種類があります。例えば、醤油、味噌、酒等には黄麹菌が、泡盛には黒麹菌、焼酎には白麹菌や黒麹菌が使われます。黄麹菌はでんぷんの分解力が強く、黒麹菌はたんぱく質の分解力が強くクエン酸をつくるなど、菌によって特性が異なります。この菌の特性を生かして発酵させることで、独特の味が生まれるのです。ちなみに、ブームになった塩麹は黄麹菌で作られた麹と塩と水を混ぜ、発酵させたもの。発酵により、プロテアーゼなどの酵素がつくられ、そこに肉や魚をつけるとたんぱく質が分解されてやわらかくなり、うま味が出るとされています。紅麹で発酵させることで、紅酒や豆腐ようなどをつくりだしますが、そこには発酵によって生み出されたさまざまな成分が含まれているのです。

黄麹
黄麹

日本の一般的な醸造用に
用いられる麹

米などの穀類に黄麹菌を繁殖させたもの。日本古来より日本酒、味噌、醤油などの醸造食品を作る際に幅広く利用されている。

紅麹
紅麹

健康維持に役立つとして食品に
用いられる麹

米などの穀類に紅麹菌を繁殖させたもの。中国・台湾などで紅酒、老酒、紅乳腐製造に利用されてきた。中国では薬膳の材料としても用いられる。

Column

中国No.1の酒に
選ばれた紅麹の酒
「沈缸酒」

沈缸酒イメージ

中国のお酒といえば、老酒や紹興酒が有名ですが、これらは黄酒という、中国で米などを原料にして作られる醸造酒のこと。日本でいえば日本酒に当たる地酒です。福建省で有名な沈缸酒は、紅麹菌を使った黄酒。赤い色が特徴的で、濃い香りとコクのある甘いお酒で、この酒を毎日適量ずつ飲むと健康効果があるといわれているのだとか。中国全土のお酒でNo.1の称号を3度も受賞した名酒として知られているようです。

赤い発酵食 紅麹ってなに?

紅麹は米などの穀類をMonascus属の糸状菌で麹菌の一種である紅麹菌で発酵させたもので、赤色をしているため「紅麹」と呼ばれています。

神農本草経しんのうほんぞうきょう

その歴史は2000年以上?!
紅麹は中国が起源

紅麹が食用として使用され始めた歴史は古く、1000年以上前の書物に「紅麹煮肉」や「紅酒」などの記載があり、すでに広まっていたと考えられています。さらに遡ること、紀元前後の秦漢の時代、『神農本草経』という薬学(本草学)の書にも、紅麹は登場しています。

中国や台湾では、古くから「血行促進」「内臓を温める」など健康効果が知られ、重用される一方で、肉の加工や酒の製造に用いられ、さらには、調味料、食品用防腐剤や天然着色料としても使われてきました。浙江省や福建省では、現在も妊婦の保健食品として利用されています。

古くから注目されていた
紅麹の健康効果

古くから知られていた紅麹の健康効果。元や明の時代に書かれた中国の薬学書には、すでに血流促進や内臓への作用が具体的に記されています。

「血液の流れを良くし、
内臓機能を改善」

古来、中国では医薬の学問のことを「本草」学といいますが、『本草綱目』は、明の李時珍が27年がかりで1578年に完成させた中国の本草学の集大成として知られる書物。その中に、紅麹の効用についての記述があり、「主に消化を良くし、血液の流れを促進し、脾臓や胃の機能を改善する」と書かれています。また「気力を回復し、傷の治りをよくし、女性の瘀血や産後の肥立ちにも効き目がある」とも記載され、さまざまな作用があると考えられていたようです。また、この書には紅麹の製法も詳しく書かれていて、著者の李氏は「紅麹を蒸した白米に混ぜて培養すると、鮮やかな赤になり、食べると胃腸に良く、食品に対して腐敗防止効果もあり、魚に用いると変色しない」と綴っています。

本草綱目ほんぞうこうもく

「脾臓を元気づけ、元気を出し、
内臓を温める」

明の前、元の時代に飲膳大医を務めたモンゴルの惣思彗が書いた『飲膳正要』にも紅麹は登場しており、「紅麹は脾臓を元気づけ、元気を出し、内臓を温める効用がある」と書かれています。同じ元の時代の呉端が編纂した『日用本草』にも、「紅麹は醸酒に使用し、血流促進の作用がある」と記されています。

飲膳正要
いんぜんせいよう

台湾にも伝わる
伝統的な健康食

古くは薬として用いられ、お酒や発酵食をつくるために用いられてきた紅麹。清の時代には福建省から台湾に伝わります。台湾では、中国から購入した麹公糟を蒸した米に混ぜて発酵させて紅麹を作り、紅麹を用いた紅酒や、その酒粕を使って作られた紅糟(ホンツァオ)という調味料に肉を漬け込んだ紅麹肉などが、その効用と共に広まっていきました。

台湾の紅麹肉や紅酒は、健康効果の高い伝統食として現代も食されています。

日用本草
にちようほんぞう

紅麹の製法

麹菌の中でも育てにくさは折り紙付き?!
ゆっくり優しく時間をかけて、慎重に培養します。

紅麹菌はデリケート!

紅麹菌は非常に弱い菌で、ある特定の環境下でなければ育たず、さらに雑菌に弱いので培養するのが難しい菌。そのデリケートさから、紅麹を工業的に扱うのは難しいとされてきました。
古くから今に至るまで、中国の福建省や台湾、日本の沖縄などの一部の地域でしか作られないのはそのためだといわれています。

紅麹の製造法

紅麹の作り方は、古くは1000年前の書籍に記載が見られます。それによると、洗った米を蒸して冷まし、さらに二度蒸しして冷ましたら、そこに紅麹菌を加えて混ぜ、紅麹菌が均一になるように整えてから約10日培養。その間水やりを3度に分けて行い、温度と湿度の管理をしながら慎重に培養し、最後に乾燥工程を経て完成となります。
現代では、この伝統製法に則った「固体培養法」と、近年産業用途として開発された「液体培養法」の2つの製法が用いられています。

発酵に伴い変化する紅麹 (固体培養法)

小林製薬のこだわり「長熟発酵」製法

小林製薬では、固体培養法をベースにした伝統製法に、独自のノウハウを組み合わせて紅麹を製造しています。そのノウハウのひとつが発酵期間。紅麹菌の種類や作りたい成分に合わせて発酵期間を調整しています。
発酵にかける期間は長いものではなんと1か月以上! ゆっくりじっくり発酵させることで、たくさんの有用成分を含む紅麹を作ることができるのです。